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成人と初恋と
『拝啓。お星様の彼方にお住まいのお母様。
フェリチェは今日、大人フェネットの仲間入りを果たしました。
わたくしはこれから、愛しのレナード様を花婿として迎えに街へ降ります。どうぞお見守りください!』
木の葉にチャルミの根っこで書いた手紙を、墓前に供えてきたのは今朝のこと。
期待に胸を膨らませたフェリチェは、フェネット族特有の大きなオオカミ様の耳と、優美な曲線を描く尻尾をピンと立てて山を降りてきた。
すべては愛しい婚約者に会うために。
(レナード様は爽やかな果実の香りがするの)
一昨年のオーグの月。山の麓でキャンバスと向き合うレナードに初めて会った時、フェリチェは彼が纏うコロンを、とてもいい匂いだと心に刻んだ。
彼の甘く蕩けるような笑顔も、鏡以上に鮮やかに描いてくれるフェリチェの似姿も、思い出そうとすれば自然と、その香りがフェネットの敏感な鼻をくすぐった。
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