カレは街一番のド級屑

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カレは街一番のド級屑

 ※ ※ ※ 「今なんと言ったんだい、フェリチェ? 僕の聞き間違いでなければ、別れてほしい――と?」 「ええ。そうです」 「悲しいよ。愛しい君に突然別れを告げられるなんて……僕の何がいけなかったんだい?」 「何がいけないか、ですって? ご自身の胸にお聞きになって!」  フェリチェが指差した先、飛び込むはずだった愛しい胸には、すでに先客がいた。  レナードの胸には、往来を歩くには少しばかり人目を憚る薄着をした、美しい御婦人が両脇にべったりとくっついている。  彼女らの腰をしっかり抱き寄せているのは、レナードの手に他ならない。 「フェリチェと結婚の約束をしていながら、これはどういうおつもりですの!」 「いいじゃないか、ちょっと息を抜くくらい」 「いいえ、ちっともよくない! 破廉恥! 浮気者! そんな方とは思わなかった。ですので……約束はなかったことに! 当然ですわよね」  フェリチェが花婿に求める絶対の条件は、浮気をしないこと。これでは温め続けた恋も醒めるというものだ。それで自ら婚約破棄を申し出たのだが――。
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