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「嗚呼っ……なんということだ。僕は本当にフェリチェを愛しく思って、君との結婚生活を楽しみにしていたのに……」
レナードが大袈裟によろめいて地に伏せるのを、住民はどこか冷めた目で見つめた。
それもそのはず。この男――街の領主の四男坊にして、女癖の悪さと放蕩自堕落ぶりで悪評高い不良債権なのだ。
まさかフェネット族の姫君が引っかかってしまうとは……と、フェリチェを見る目にはどこか憐れみが込められている。
「……どうせ僕は領地も貰えない四男坊だし、君のところに婿入りできるなら悠々自適に、のんべんだらりと暮らせると思ったのになぁ」
耳がいいせいで聞こえてしまった彼の本音に、胸の痛みを覚えながらも、フェリチェは萎れた尻尾の毛を逆立てた。
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