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怒りに身を任せれば、用意していた愛の言葉はたちまち呪いの罵倒に置き換わる。
フェリチェの口からそれらが滑り出ようとしたその時、レナードが一足先に達者で軽薄な口を開いた。
「はあぁ、恋に敗れた胸の痛みだけでも僕は立ち直れない。その上、このような公衆の面前で婚約破棄とは……なんと不名誉なことか!」
情婦たちに支え起こされながら、レナードはフェリチェに指を突きつける。
「ああ、胸が痛い、苦しい、張り裂けそうだ。……そ、こ、で、だ! 僕は君に、相応の謝罪と誠意の提示を求める!」
「誠意?」
「フェネットの髪は、市場では一級品。姫の髪の一房でもいただければ、数ヶ月は遊んで暮らせる……ああいや! 傷ついた心の治療を受けられる! どうだい、フェリチェ。心の広い僕が、君の無礼を髪の一房で許してやろうと言うんだ。安いものだろう?」
レナードは腰に穿いた剣を抜いて、フェリチェの足元に放った。
刀身が春の陽射しを弾く。使い手の腐った性根に似つかわしくない、丹念に鍛えられた鋼は眩かった。
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