2.壮真(1)

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2.壮真(1)

生まれたときから、壮真は両親のマスコットだった。  父と母はそれぞれ事業を興して成功していた。いわゆるパワーカップルというやつだ。  そんなふたりの元に、悪魔のごとき流行がやってきた。SNS全盛期だ。それを承認欲求の塊のような両親が放っておくわけはなかった。  幸い姉は「女の子だから」という理由で顔出しさせられることはなかった。彼らにもその程度の良心はあったようだ。――と思いたいが、実際は十歳上ですでに物心ついていた姉のことは、自由に操ることができなかったのだろう。  彼らは壮真に子供らしからぬハイブランドの服を着せ、映える店やリゾートに連れて行った。親子の思い出のためではない。写真を撮ってSNSにアップするためにだ。  テーブルいっぱいに並んだスイーツ(それも母親の趣味でヴィーガンスイーツだ)を写真だけ撮り「次の店の予約時間があるから」と一切手を付けずに帰ることもしばしばだった。  髪を伸ばしていたのも、両親の指示だ。 「息子と一緒にヘアドネーションに参加します~。頑張って綺麗に伸ばすぞ♡」という写真を撮りたいがために。  ネットニュースに取り上げられて、家に取材が来ると、壮真に向けられた質問も母が横から全部答えた。 『まだ小さいのに社会貢献に興味を持って偉い』 『お母様の教育の賜物ですね』  期待通りの称賛を得て、母は満足そうだった。  ある夏休み、この田舎に預けられたのは、子供を自然の多いところで遊ばせようなんて理由ではなかった。父と母、それぞれが不倫相手と海外旅行に行くタイミングと重なっただけの話だ。  そんな十歳の夏、棗に出会った。
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