【伊藤博文】選択肢が豊富すぎて逆に困る

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【伊藤博文】選択肢が豊富すぎて逆に困る

 伊藤博文は側近からの報告に反応ができずにいた。あまりにも驚きの内容だったからだ。いい意味で。  カナダで金鉱が見つかった!? なんということだ。思わずガッツポーズをする。天は我が国を見離さなかったらしい。 「これで、金鉱はアラスカ、アイダホ州とカナダを合わせて3つになったわけだ。これだけあれば、金銭面で困ることはあるまい。復興に全力を尽くせる。すぐさま、大蔵省の大久保を呼べ! 今後の話し合いがしたい」 「大久保、カナダの金鉱の話は聞いているな?」 「もちろんですとも。喜ばしいことです」  大久保利通もウキウキな気分を隠す気はないらしい。今にも踊りだしそうなくらいの喜びようだった。 「さて、金を採掘すれば復興はより早く進むだろう。復興が済んだら、領土拡大のために戦争をすることになるだろう。財政面からいくと、どこが良さそうだ? メキシコか? それとも東南アジアか?」  大久保利通は唸る。しばらく考えるとこう言った。 「一財政官としてはメキシコでしょうね。東南アジアはフランス領もあって、複雑です」  確かにその通りだ。東南アジアはイギリスやフランスがいるため、関係が入り組んでいる。大久保利通の言う通りメキシコがいいだろう。 「よし、その案を採用しよう。帰り際に西郷と勝の二人を呼んでくれ。今の軍事力を把握して、作戦を立てたい」 「それで、二人はどう思う? まずは西郷、お前からだ」 「そうですな……。メキシコを奪えば南米への進出の足がかりになります。問題は陸地が少ないところです。今回は海軍に活躍してもらうことになるでしょう」と西郷。 「そりゃあ、助かる。戦いで勘を戻さなければ、海戦で負ける可能性も出てくる。西郷に賛成です」  二人の将軍の意見は一致していた。そうとなればメキシコ進出で問題なかろう。以前は、西郷隆盛が飛行船からダイナマイトで爆撃した。しかし、あれは奇襲だったから成功したのだ。別の作戦を考える必要がある。 「勝、作戦を考えておけ。西郷に負けないような作戦をな」 「すでに考えてあります。多少、陸軍の助けが必要ですが。伊藤首相の期待に応えてみせますよ」  勝海舟の顔は自信に満ち溢れていた。メキシコとの戦争は勝ったも同然だな。伊藤博文はそう思った。
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