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【伊藤博文・勝海舟】お友達になりませんか
アラスカに上陸した勝海舟は寒さのあまりに凍え死にそうだった。歯をガタガタと震わせる。息は白く、コートなしでは生きていけない。まったく、伊藤博文もとんでもないところに派遣してくれたものだ。あとで文句を言ってやる。
それにしても、この極寒の地から金が発掘されるとは思ってもいなかった。目の前では部下たちがせっせと採掘している。明治天皇には先見の名があるらしい。いや、これは偶然だろう。
光り輝く金。この金が大日本帝国の経済を支えているのかと思うと、誇らしくなる。
今頃ロシア帝国はアラスカ売却を後悔しているに違いない。そもそも、ロシア帝国が悪いのだ。南下政策を進めて財政難になったのだから。明日は我が身かもしれない。一軍人として反面教師にすべきだろう。
採掘をぼんやりと眺めていた時だった。勝海舟が東の方からやってくる集団を見つけたのは。
おいおい、東側といえばイギリス領のカナダじゃないか! まさか、金を奪いにやって来たのか? そうとなれば、やるべきことは一つ。戦争だ。
「銃を持て! 相手をギリギリまで引きつけるぞ。カナダの野郎どもに大和魂を見せつけろ!」
まだだ。もっと引きつけなくては、弾は当たらない。はやる気持ちを抑える。
よく見ると、カナダ人たちは白旗を振っている。うん? 戦の前に降参? 我が軍の武装に恐れをなしたに違いない。しかし、つまらないな。軍人としては一戦交えてみたかった。
カナダ人たちに近づくと、リーダーと思われる人物が何かを差し出してくる。それは手紙のようだった。もちろん、内容は分からない。
「勝将軍! 本土の伊藤首相から電報です!」
後ろから部下が走ってくる。電報?
「読み上げます。『カナダを国として認めることを伝えたところ、喜んでくれた。同盟成立だ。近いうちにそちらへ行くから、誤って戦わないように。お前は喧嘩早いからな。よろしく頼むぞ』。以上です」
カナダと同盟!? 寝耳に水だった。そうか、このカナダ人たちが差し出している手紙も同じ内容に違いない。それにしても、味方に知らせるのが遅いのは困る。危うく戦争になるところだった。これで伊藤博文に言う文句は二つになった。
勝海舟は困り果てていた。電報には具体的な指示がない。いくらカナダと同盟を結んだとはいえ、アメリカに喧嘩を売るのは早すぎる。我が国の偉大なる首相に次の策はあるのか。考えるのはやめよう。それは軍人である自分のするべきことではない。勝海舟はカナダ人と握手をしながら、そう思った。
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伊藤博文は勝海舟からの返事を受け取ってドキッとした。金の採掘の報告のほかにも文句がいくつか書かれている。確かに、カナダとの同盟は早く伝えるべきだったかもしれない。まあ、結果オーライだろう。
さて、カナダと同盟を組んだことだし、アメリカに喧嘩を売る日も近いだろう。アメリカのリンカーンの泣き顔を早く見たいものだ。我が国が勝ったら、土下座をして許しを乞うに違いない。それを想像するだけで伊藤博文は笑いが止まらなかった。どのようにして進出するか、西郷隆盛と勝海舟に相談が必要だな。二人もアメリカ進出について同意見に違いない。首を洗って待ってろよ、アメリカ。
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