【伊藤博文・西郷隆盛】大久保たまにはやるじゃんか

1/1

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

【伊藤博文・西郷隆盛】大久保たまにはやるじゃんか

 伊藤博文はコレラが治り、首相に復帰すると、大久保利通の提案に目を通す。奴もたまにはやるじゃないか。この前の首相代理より役立つ。  この作戦であれば、アメリカをさらに追い込むことができる。ただ、この作戦を西郷隆盛に伝えたら激怒するに違いない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  西郷隆盛は伊藤博文から指示された作戦に憤っていた。陸軍大将としてのプライドが許さなかった。しかし、この前のメキシコ戦でやりたい放題してしまったという負い目がある。指示に従わなければ、最悪の場合、陸軍大将をクビにされるだろう。それだけは避けたい。西郷隆盛は仕方がなく作戦を決行した。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  西郷隆盛が作戦を実行してから数週間後。新聞は「アメリカにてコレラ大流行!」との記事が一面を埋め尽くしていた。伊藤博文はほくそ笑んでいた。そう、これは大久保利通の提案した作戦だった。コレラを生物兵器として使い、弱らせるという寸法だ。すでにアメリカの経済は弱っている。追い打ちをかければ、いいのだ。今頃アメリカのトップは慌てふためいているに違いない。  大久保利通の作戦は、伊藤博文がコレラに罹ったことに着想を得たに違いない。コレラに罹ったのも無駄ではなかったようだ。あとは西郷隆盛に任せればいい。飛行船から爆撃しつつ、陸軍が攻める。吉報が入る日も近いだろう。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  西郷隆盛は笑いが止まらなかった。生物兵器を使うのは卑怯な気がしたが、弱った敵軍を蹂躙するのは快感だった。 「西郷将軍、敵陣地に白旗が見えます!」  攻めたところは必ず陥落する。無敵になった気分だった。いや、我が軍はもともと無敵だったが。そんな時だった。伊藤博文から電報が入ったのは。 「読み上げます。『陸軍の快進撃は素晴らしい。期待以上の活躍だ。しかし、これ以上戦いが長引くと、我が国の経済が持たない。アメリカと講和条約を結ぶから、攻撃をやめるように』。以上です」  西郷隆盛ははらわたが煮えくりかえる思いだった。ここで講和条約? ありえない。首相はコレラに罹ってまともな判断が出来なくなったに違いない。  そもそも、今回の作戦自体が気に入らなかった。卑怯な真似をしている気がして。漢たるもの、真正面から勝負すべきだろう。だが同時に立案した大久保利通に感心していた。軍人としての素質があるかもしれない。もし、また伊藤博文が倒れたら、奴を首相代理にしよう。そうすれば思う存分戦ができる。西郷隆盛は伊藤博文宛に電報を打った。「大久保利通に軍人の素質あり」と。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加