【大久保利通】一応大蔵省トップですから

1/1

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ

【大久保利通】一応大蔵省トップですから

 大久保利通の耳にも「パナマ海峡を手中に収めた」という情報は入っていた。これで、ヨーロッパへの道がひらけたわけだ。ヨーロッパが近づくとどうなるか。イギリスとの合同作戦がしやすくなる。つまり、領土が広がる可能性が高まるのだ。軍人ではない大久保利通だが、大蔵省トップとしては領土が広がるのはありがたかった。資源の調達や産業の発展によって国民の生活が潤う。  うん? 待てよ。パナマ海峡の使い道はそれだけだろうか? いや、違う。もっと素晴らしい使い方があるじゃないか! 早速、伊藤博文に提案しよう。 「大久保、お前の方から来るということは、何か閃いたという認識でいいな?」 「もちろんですとも。この前の戦争で我々はパナマ海峡を手に入れました。これはヨーロッパとの距離が近づいた以外にも使い道があります。それはパナマ海峡を使う他国から通行料をとることです」  大久保利通には自信があった。提案が採用される自信が。 「ちょっと待った! それではイギリスとの関係がこじれてしまう」 「伊藤首相、もちろんイギリスが使うのはタダです。同盟国ですからね。でも、我々にもメリットがあります。イギリスにこう提案すればよいのです。『パナマ海峡を自由に使っていいから、大日本帝国はスエズ運河を自由に使いたい』と」  そう、これならウィンウィンだ。そして、この政策の目的は海路の開拓以外にも目的がある。それは他国からの通行料を取ることで、大日本帝国は潤うし、他国は経済が弱る。これで、我が国は経済力でトップに立つに違いない。 「大久保、さすがだ。抜け目がないな」  伊藤博文から褒められた! いつもは叱られてばかりだから、これは貴重だ。  大久保利通が首相執務室から出たときだった。首相の側近が大慌てて走ってきたのは。その手元には新聞があり、そこには大見出しでこう書かれていた。「イギリスとフランス、アフリカで激突」と。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加