【西郷隆盛】お願いです、活躍の場をください

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【西郷隆盛】お願いです、活躍の場をください

 西郷隆盛は興奮していた。伊藤博文から呼び出されたからだ。アメリカの不況の話は知っている。そして、軍人と話がしたいという事実。これらを結びつければ用件は分かりきったことだ。アメリカを攻めることを考えているに違いない。やっと、出番がきたわけだ。  ノックすると「どうぞ」と返事がくる。部屋に入ると、ニコニコとした伊藤博文の姿があった。これは、いい予感がする。西郷隆盛の考え通りに違いない。自然と西郷隆盛の顔も笑顔になる。 「呼んだ理由は分かるな?」 「戦争ですな。アメリカを攻めるおつもりで?」  西郷隆盛は嬉しさを隠すことはできなかった。 「それが、迷っているんだ。確かにアメリカ経済は混乱している。そうはいっても、大国の一つ。カナダ側から南下するとして、勝ち目はあるのか?」 「絶対勝てるという自信はありません」  正直に答えたが、このままではせっかくの戦争の機会を失ってしまう。軍人としては戦いこそがすべて。そのために生まれてきたようなものだ。伊藤首相は判断に困っているが、あと一押しすれば戦争に踏み切るに違いない。何かないか? 「メキシコと手を組んではいかがでしょうか。我々は軍人派のリーダーを選挙で勝たせたという貸しがあります」  我ながらナイスアイデアだと西郷隆盛は思った。 「メキシコか……。しかし、手を貸してくれるか分からない……。もっと、決定打が欲しい」  駄目だ。もっと決定的な何かが必要だ。そうだ! これならどうだ。 「メキシコは20年ほど前にアメリカとの戦争で負けています。その際に、広大な領土を失ったはず。今回の戦争で勝てばアメリカへの復讐にもなります」  頼む、首を縦に振ってくれ。ほら、早く! 「一理ある。しかし、何か作戦がないとアメリカには勝てないぞ」  ちくしょう! 焦ったい! ああ、もうとっととゴーを出してくれ! 頼むから! 「では、こうしましょう。一点集中攻撃です。アメリカの西部だけに狙いを絞るのです。海岸からは海援隊が射撃して、メキシコと一緒に南北から攻めるのです。全面戦争では勝つのは難しいですが、一点に集中すれば、勝てるでしょう」  西郷隆盛は伊藤博文の次の言葉を待つ。これならいける。いや、これでいけないと困る。西郷隆盛にこれ以上のカードはない。全力をかけて伊藤博文を説得しているのだ。ここで首を横に振られたら、次に戦いに参加できる機会はいつになるか分からない。 「ふむ、なるほど。では、それでいこう。メキシコには私から連絡する。西郷、カナダまで行ってくれ。お前の好きな戦争の時間だ」  西郷隆盛は心の中で、ガッツポーズをした。これで、大好きな戦争ができると。
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