【西郷隆盛】戦争の仕方、教えてやるよ

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【西郷隆盛】戦争の仕方、教えてやるよ

 目の前で繰り広げられる戦いを見ながら西郷隆盛は満足していた。陸軍がアメリカ軍をジリジリと南へと押しやっていたからだ。敵軍が総崩れで逃げ出すさまも面白い。目的地も徐々に近づいている。そこまで追い込めばこちらのもの。アメリカ軍も驚くに違いない。大日本帝国の作戦に。  数週間が経ち、陸軍はついにシアトルまで到達していた。いよいよ、作戦の第二段階開始だ。西郷隆盛はタイミングを見計らっていた。時計をチラチラ見ると、部下にこう指示した。「一度、全軍を撤退させろ」と。 「ちょっと待ってください! 今、流れは我が軍に来ています! 撤退する理由はありません!」 「まあ、おとなしく見ていろ。しばらくしたら、意図が分かるだろうから」  しばらくしてからだった。轟音がしたのは。それは、大砲のものだった。  どうやら、勝海舟率いる海軍が海から援護射撃を開始したらしい。 「今だ! 敵軍は狼狽(うろた)えている。このまま押し込め!」  アメリカ軍は蜘蛛の子を散らすようだった。慌てふためいている様子が滑稽だった。 「西郷将軍、このまま南下しますか? それとも東部へと戦線を拡大しますか?」  西郷隆盛の答えは決まっていた。 「南下優先だ。メキシコとも西部を一点集中で攻めると約束している。東部はそこそこにしておけ」 「かしこまりました!」  今回の戦争の目的は西海岸を我が物とすることだ。いたずらに戦線を拡大するのは賢くない。それに、武力戦が長期化すれば、装備は損耗する。戦争の長期化は国民にとって大きな負担にもなる。軍人とはいえ、それくらいは分かっている。  陸軍は勢いのまま南下を進めると、ついにメキシコ軍と合流した。ちょうど大陸横断鉄道のあたりで。 「そちらのリーダーは誰だ?」と西郷。 「私です」  一人の男が進み出る。 「今回の勝利はメキシコの援軍なしでは無理だった。改めて礼を言わせてくれ」 「こちらこそ、選挙の時にはお世話になりました。そのお返しです。アメリカに復讐出来て満足です」  二人は抱き合った。  西郷は思った。この勝利を受けて、伊藤博文は戦争に前向きになるだろうと。そうすれば、また戦争ができる。勝ち続ければ、いいのだ。西郷隆盛は自信があった。負けない自信が。  次はアメリカと一対一で戦争したいものだ。その時は、向こうのトップ・リンカーンの首を手土産にしよう。伊藤博文への最高のプレゼントになるに違いない。いや、伊藤博文は首を見て腰を抜かすかもしれない。軍人ではないから。それはそれで見ものだな。どっちに転んでもいい。戦争さえ出来れば。
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