【伊藤博文】嬉しい誤算で狂喜乱舞する

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【伊藤博文】嬉しい誤算で狂喜乱舞する

 伊藤博文は西郷隆盛からの知らせに満足していた。アメリカの西海岸を掌握した。それでも十分なのに、アメリカの領土のうち西側の3分の1を手に入れたというのだ。これは嬉しい誤算だった。  伊藤博文は西郷隆盛に感謝の電報を送ると同時に、一つの指示をした。これで安心だ。  アイダホ州、ユタ州という場所まで落としたのであれば、することは一つ。大陸横断鉄道の西側を割譲させればいい。そうすれば、移動手段に困ることはない。  アメリカとの交渉は難航したが、伊藤博文が押し切った。これでサンフランシスコという大都市を得たことになる。  問題はメキシコとの領土問題だ。 「首相、メキシコからの使者を応接室に案内しました」 「よし、すぐに行く」  ここからが腕の見せ所だ。西郷隆盛の活躍に応えるためにも、強気でいかなくてはならない。  応接室に着くと、早速領土問題の話になった。 「今回得た土地の配分ですが、北はカリフォルニアまでいただきたい」とメキシコ側。  カリフォルニア!? あそこはこちらの陸軍が落としたたずだ。それに、アメリカからは大陸横断鉄道を譲ってもらっている。始発であるサンフランシスコがこちら側になくては意味がない。すぐに「ノー」と答える。 「それはないでしょう。アメリカとの戦争に負けるまで、あそこはメキシコの領土でした」とメキシコ側は食い下がる。 「そこまで言うなら仕方がない。お前たちとも一戦交えることになるな」  ハッタリである。今の大日本帝国にそんな余力はないし、下手すればアメリカが横槍を入れてくる。頼む、ここで引いてくれ。 「カリフォルニアには金鉱があります。譲れません」とメキシコ。 「どうやら、あなた方の情報は古いようだ。あの金鉱はアメリカが採掘しきっている。もう、金はとれない」  残念ながら事実だった。もし、あそこで金が採掘できたら、我が国の経済はもっと潤ったに違いない。アメリカの奴め! 「なんと! そうでしたか……。分かりました。サンフランシスコまでで手を打ちましょう。代わりに、大陸横断鉄道はメキシコ側にも使用権を認めてください」  伊藤博文は考え込む。鉄道をメキシコが使って問題はないのだろうか? 何かあってからでは遅い。 「それはダメだ。今回得た領土の半分がそちらのものになるんだ、鉄道まで譲歩できない」 「そうですか……。帰国したら私は非難されるでしょうね。無能な使者として」メキシコ側は苦笑いをしていた。 「いや、そんなことはないでしょう。領土の半分を勝ち取ったのですから」  伊藤博文は思った。今回は領土の半分をメキシコにくれてやった。別に問題ない。またいつかメキシコと戦争をして勝ち得ればいいのだから。
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