神保町

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 デートを神保町にして、悪かったかなと思った。  後になって趣味が合わないと気がつくよりも、早くわかった方がいいかと思って、自分の趣味に振り切ったデートにしてしまったのだ。  もう三十路前で、余り悠長に相手を探してもいられない気がして、無難なデートを幾度も重ねるよりはと思ってしまった。 「なあ、SFの本見たいって言ってただろ。そっち行くか?」  ヒロは素直に頷いた。スマホを出して、しばらく操作してから俺に見せた。 「俺、この店行ってみたい。調べてきたんだ」 「ああ、そこなら品揃えいいから、行ってみるか。 俺がさっき言った店と近いから、そこも寄っていいか?  途中気になった店あったら寄りながら、ゆっくり行こう」 「うん」  二人で歩く道すがら、ヒロはちょこちょこ寄り道をしたがり、一緒に色んな書店に入った。  何度か来たことのある店に、料理の本があることを、俺はヒロに「ほら」と指差して言われるまで知らなかった。  映画のパンフレットなどの専門店では、俺がぼんやりポスターを眺めていたら、ヒロが顔真似をして笑わせたり、文庫の多い書店で、お互いに何冊か買い物をした。  児童書の専門店では「小学校のころ読んだ本だ」とヒロは目をキラキラさせて、それも買っていた。  ビルのエレベーターの階を順に押して全階を見て回ってみることにしたのだが、途中の階で、エレベーターのドアが開くと、ギラギラとした照明のおそらくエッチな本の専門店にあたってしまった。  たくさん飾られた女性のポスターを見て二人で顔を見合わせると、俺たちはそっとエレベーターの「閉」ボタンを押してそのまま一階へ降りた。  外に出たらなんだか笑えてきて、堪えきれずに声を出して笑った。
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