神保町

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「ちゃんと、付き合ってからしたい」  俺はヒロからそっと視線を外した。 「……お前みたいな若くて将来あるやつが、 俺みたいなのとわざわざ付き合う必要ないって。 誰かと付き合う前に色々済ませておきたいって言うなら、 協力するし」  ぼろぼろとヒロの目からまた涙が零れて、俺は悪いことを言ったなと思った。 「俺、ハヤミさんのこと好きだもん。 嘘じゃない。 セックスするために言ったんじゃないよ」  俺は何も言えなくて、ヒロの目元に手を伸ばそうとしてやめた。 「ごめんな、俺の反応が過剰だったよな。 お前は何にも気にしなくていい」  明るく言って、ヒロの肩を叩く。  ヒロは、涙でぐずぐずのを出した。 「ハヤミさん、もう一回、俺にチャンスちょうだい。 信じてもらえるように頑張るから」 「そこまで……」  しなくてもいい。  俺相手に、泣いてまで頑張らなくていい。 「ごめんね、焦ってあんなこと言って。 大人っぽく見られたくて、早く好きになってほしくて、 何もかも間違えた」 「いや、俺が悪い。こんなん、めんどいだろ?  今回でもう……」  ヒロの手のひらが、俺の口を塞いだ。 「お願い! ……もう一回、会って。 今日はちゃんと帰るから」  俺は頷けなくて、そのくせ、もう会わないと口に出すこともできなかった。
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