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「ごめ……、でも、ンフ、お前……っ、加工しすぎ……」
ヒロの顔が真っ赤になって、額に手を当てて俯いた。
「俺、目の下にある線みたいなの消したくて、
それに合わせてバランスとろうと他も弄ってたら、
途中で自分でもよくわかんなくなっちゃった……。
やり過ぎてたかも」
不安そうなヒロの肩に一度触れる。
「いや、写真より全然いいよ。かっこいい」
顔を上げたヒロは、今度は照れたような顔をしていた。
「嘘だー……」
慰めではなく、俺は加工された写真より実物のヒロの方がよかった。
真ん中で分けた、ゆるく癖のある黒髪は少し硬そうで男っぽい。
よく動いて表情豊かな長めの眉に、切れ長の二重の目は、目の下の涙袋がはっきりしていて、すっと線ができている。
「笑ってごめん。
びっくりしただけで、写真も、素顔も、両方変じゃない」
ヒロは赤い顔を誤魔化すように手の甲で頬を擦り、小さく頷いた。
「目の下のとこ、俺好きだけどな。
それって女子がわざわざメイクで強調したりするやつだろ」
俺がそう言うと、ヒロは口を少し尖らせて顔を逸らした。
「ハヤミさん、そんなこと言って自分は無加工じゃん」
「俺はアプリの使い方わからないだけだよ」
俺たちの側を人が通って、ヒロがそっと避ける。
「歩きながらでいいか?」
行き先を軽く指さして尋ねると、ヒロは頷いた。
「改札前にしとけばよかったな。出口、わかりにくかったろ」
「あ、いや、俺がちょっと方向音痴だから」
並んで歩くと、ほとんど同じような背丈だ。
177か8位だろう。
まだ若いせいかほっそりした体つきをしていた。
体重は、プロフィールよりも大分軽そうに見える。
筋肉があるように見せたくて重めに書いたのかもしれない。
5月半ばの爽やかな気候に合った、五分袖くらいのオーバーサイズのTシャツを、ワイドパンツにタックインしている。
鞄は今日の行き先に合わせて大きめのキャンバス地のトートバッグだった。
「ヒロ、もしかして改札出たとこで地図見てた?
俺より早く着いてたんだな」
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