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社長は元々ライターで、出来上がったもののどこが悪いかの指摘はできるけれど、ディレクション向きの人ではないから、大枠をどう変えてどういう方向に直せばいいかという指摘は、余りうまくはなかった。
忙しさにかまけず、俺が修正の面倒を見ればよかった。
もちろん、急に連絡を絶ってしまうことは褒められたことではないが、俺たちにも問題はあった。
でも、どんどん新しいものが出ては消えるこの業界で、人材をゆっくり育てることも、厳しい要求に見合う対価を渡すこともできていない現状が悔しい。
乾いた目に、目薬をさして、零れた薬液をティッシュで拭う。
俺は、アプリを使うユーザーの気持ちがわかる。シナリオを書くライターさんの気持ちもわかる。
シナリオはいつもハッピーエンドだ。
課金をすればより確実に、胸がときめくような会話と、好きなキャラが自分に想いを寄せる姿のスチルが手に入る。
日常のままならなさのなかで、ちゃんと報いのあるフィクションの世界は、ささやかでも楽しい安らぎになる。
書き手にとってもそうだろう。
だけど、こんなことがあると、書き連ねている幸せなシーンに、ふと寂しさを感じてしまった。
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