品川

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   *****  遅くまで会社に残り、原稿を終えてから、俺は連絡のつかなくなったライターさんに一通メールを出した。  きっと読んではくれないだろうが、こちらがうまくディレクションできなかったことに対する謝罪と、媒体との相性と能力は無関係であることを伝えた。  書くことそのものを、諦めて欲しくはなかった。  転職。そういう言葉も、頭をよぎる。  三十を前に、きっと俺はできることが増えて、その代わり、若い頃ほど無節操に何でもしたいとは思わなくなっている。  できることが増えた分、きっと、立ち向かわなくてはいけないことが、増えたのだ。  この仕事は好きだ。社長に恩も感じている。  でも、この会社のやり方に、理不尽を感じることもある。  社長はそれを指摘しても、変わらないかもしれない。  行動に伴う責任が、どんどん重くなる年代にさしかかっていた。  俺が誰かと恋をしたいと思ったのは、セックスだけの関係が面倒だとか、そういう話では多分ない。  自分の人生を自分の手で押し進めていかなければならない段階に入って、不安だった。  そんなときに、側に誰かがいてくれたら、どれほど心強いだろう。  支え合える人がほしかった。
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