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ヒロの弾んだ声が聞こえてきて、俺はそっと踵を返す。
先ほどと同じあたりに戻って、自分のスマホを見つめた。
すぐに戻ってきたヒロが笑顔で俺の方に歩いてくるのを見て、俺も笑顔を作る。
「……次、どこいく?」
そう尋ねると、ヒロは嬉しそうな、ちょっと気恥ずかしそうな顔でこそっと囁いた。
「水族館」
「ここら辺にあんの?」
ヒロはコクコク頷いた。
「きれいなとこ。
俺も知らなかったんだけど、すごいよ。
あ、その前にここ寄っていい?」
スマホの画面には、広い皿に抽象画みたいにソースが散ったこじゃれたケーキが写っている。
「ポップコーン食べたし、おなかいっぱい?」
「いや、まだ全然食える」
「よかった」
そのとき、画面にプッシュ通知が出て、ヒロは即座に画面をオフにした。
「いこっか」
ヒロは俺を促すように、俺の背に触れようとして、やめる。
俺は曖昧に頷いて、もう一度笑顔を作った。
通知の内容までは見えなかった。
でも、アイコンはしっかりと目に入ってきた。
俺とヒロの出会った、マッチングアプリのアイコンだ。
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