品川

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 わからないと、つまらない。  これはきっと、楽しくていいデートだ。俺が最初ヒロを連れ回した時よりずっと。  お互いに好きで、付き合っていたら、これは楽しい。  同じものを見て感想を話し合って、相手とおんなじ所や違うところを見つけるのは、きっと心の距離が近くなる。  流行りのカフェはずっと行き続ける場所じゃないから、特別で思い出に残りやすくて、ふと思い出したときにまた行こうかなんて言ってみたりできる。  こういう場所も、とても非日常的で、鮮烈で、夢みたいで、一緒に日常を過ごしている大事な人と来たら、すごく楽しいだろう。  写真を撮って、見返して、あの時は楽しかったねと言い合ったり、喧嘩の時にふと思い出して当時の大事な気持ちを思い出したりできるんだろう。  お互いに、好きなら。 「きれいだね」  ヒロの頬にも、鮮やかな照明が当たっている。  嬉しそうに俺を見る。 「そうだな」  ヒロのポケットから、スマホが震える微かな音がする。  俺は目を逸らして、水槽の中で浮かぶクラゲを見つめた。  水槽のガラスに、背後にいるヒロがスマホを操作している姿が映る。  別に、まだ付き合っている訳じゃない。  前に付き合いたいとは言われたけれど、俺の答えは拒絶に近かった。  それに、結婚相談所なんかでも、数人までなら同時に付き合っていいとか聞いたことがある。  俺だってマッチングアプリで連絡をくれた他の人と、全く連絡を取り合わない訳じゃない。 「クラゲって、いいな」  羨ましかった。  複雑なことを考える器官などもとより持たず、半透明の体は清潔そうで美しく、触れた相手に痛みを残す毒を持っている。 「俺、こんなにちゃんとみたの初めてかも」  ヒロの言葉に無意味な愛想笑いを返して頷く。  他の誰かと行く下見かもしれないと、俺はぼんやり思った。
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