キスは三度目のデートで

吉祥寺

　　職場近くの喫茶店で昼飯を食いながら、転職情報サイトを見漁っていた。

　今より条件が落ちるところも多い。

　スマホが一度震える。

　それは無視して、味わいもせずナポリタンを口に突っ込む。
　スクロールしていた画面を止めた。

　一度、取引のあった会社が、ライター兼エディターを募集していた。

　うちとの取引は一度だけだった。
　社長はそれを怒っていたけれど、俺は、いい会社だと思った。
　先方からの連絡やチェックバックが遅れたことは一度もなく、その分こちらの納期にも厳しかった。

　ストーリー重視のＲＰＧがメインで、うちに仕事を依頼したのは、確かアプリの周年記念の大型イベントがあった時期だ。
　基本的には社内か、直接ライターに依頼しているようだった。

　こちらに送られてきた資料は細かく丁寧に作られていて、どのライターにでも任せられるようにしっかりとしたプロットが送られてきたことを思い出す。

　心臓が、少しずつ速く脈打ち始める。

　今うちの会社に所属していることが、マイナスに働くかもしれない。
　それでも、受けてみたかった。

　スマホがまた震えた。

　とにかく、求人をお気に入り登録した。
　家で熟読して、応募しよう。

　もう一度、スマホが震えて、俺は目を伏せて舌打ちした。

　通知を切るのを忘れていた。