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「もしかして、品川行った日……」
俺は頷く。
「お前に渡したいものあって戻ったら、電話、聞こえた」
ヒロは自分の頭を抱えた。
「あー……。そっか、本当にごめん。
あれ聞いたら、そうだよね、
二股かけてるって思われてもしょうがない、けど……。
俺本当に、ハヤミさんだけ」
「そもそも、あの日ずっと、他の誰かと連絡とってただろ」
ヒロは苦しげな顔をしてから、「うん」と確かに頷いた。
「一回目のとき、俺すごく失敗したから……。
大学の友達には、関係性も同意もない状態で体に触ったりするのも、
会ったその日に付き合う前提で
その先誘うのも絶対駄目って言われた」
いわれてみれば全くだと思うが、俺はヒロに触れられたことに関しては、特に気にしていなかった。
それに、ずっと誰かと連絡を取り続けていたことへの答えにはなっていない。
「でも、アプリで知り合ったゲイの友達は、
ヘテロとは色々違うからって言ってて、
俺、わかんなくなっちゃって、
でも絶対失敗したくなくて、
その人に、デートの間中ずっと、相談乗って貰ってた」
俺はコーヒーを飲んで、スワンボートが泳ぐ池を眺めた。
「いや……その友達、普通にお前狙いだろ」
ヒロは俺の視界の端でうなだれてから小さく頷いた。
「……うん。そうだったみたい。
俺、会うまで、わかってなかった」
ヒロはきれいにセットした髪をくしゃくしゃにした。
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