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ドアを閉めた瞬間、ヒロが俺の二の腕を掴む。
「速水さん……月久さん、キス、していい?」
俺は答えずに自分からヒロの唇を塞ぐ。
「ん」
ヒロは微かに甘い声で呻いて、目を伏せ俺の唇を貪った。
背中に腕を回すと、ヒロも俺に体を押しつけてくる。
微かな汗のにおいと、同じコーヒーの香りと味がする唇に、ひどく興奮した。
「名前めっちゃきれい。月久さんて呼びたい」
「い、けど……」
俺が答える合間にもヒロはキスを仕掛けてくる。
肩を掴んで引き剥がした。
「もっとしたい」
甘えて駄々をこねるような声に少し笑ってしまう。
「わかったから、靴脱げ。ベッドで」
「うん」
食い気味の返事とともに、ヒロがもぞもぞと靴を脱ぐ。
「家、近かったんだね」
「二駅違いで家近いって言うかは微妙だけど、
どっかで、すれ違ったことあるかもな」
ヒロは俺に纏わり付いたまま、部屋に上がった。
性急かなとは思ったが、俺はヒロをベッドに引き寄せ、二人でもつれるように転がる。
ヒロは俺の額や鼻にキスをしながら、シャツの裾から手を入れて体を撫でた。俺も、ヒロの腰から背をじっくりと撫で上げる。
はぁっ、とヒロが甘い息を吐いた。
「それ、きもちい。
……俺たち、マッチングアプリしてなくても、
いつか出会ってたかな」
「かもな」
俺はヒロの顎の先にキスをして、喉仏に歯を立てる。
ヒロはお返しのように俺の胸の突起を指先で押し潰した。
「あ」
「でも俺、アプリで会えて良かったかも。
やりとりしながら、会おうって思ってくれたのも、
恋する前提の場所で、他にも色んな人がいたのに、
俺のこと選んでくれたのも、嬉しい」
「あっ、……く、ぅ」
甘い声で囁きながら、俺の胸を指先で愛撫し、腰を擦り付ける。
立ち上がったもの同士が布越しに触れあって甘い痺れが走る。
じわりと涙が滲んだ。
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