吉祥寺

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   *****  ドアを閉めた瞬間、ヒロが俺の二の腕を掴む。 「速水さん……月久さん、キス、していい?」  俺は答えずに自分からヒロの唇を塞ぐ。 「ん」  ヒロは微かに甘い声で呻いて、目を伏せ俺の唇を貪った。  背中に腕を回すと、ヒロも俺に体を押しつけてくる。  微かな汗のにおいと、同じコーヒーの香りと味がする唇に、ひどく興奮した。 「名前めっちゃきれい。月久さんて呼びたい」 「い、けど……」  俺が答える合間にもヒロはキスを仕掛けてくる。  肩を掴んで引き剥がした。 「もっとしたい」  甘えて駄々をこねるような声に少し笑ってしまう。 「わかったから、靴脱げ。ベッドで」 「うん」  食い気味の返事とともに、ヒロがもぞもぞと靴を脱ぐ。 「家、近かったんだね」 「二駅違いで家近いって言うかは微妙だけど、 どっかで、すれ違ったことあるかもな」  ヒロは俺に纏わり付いたまま、部屋に上がった。  性急かなとは思ったが、俺はヒロをベッドに引き寄せ、二人でもつれるように転がる。  ヒロは俺の額や鼻にキスをしながら、シャツの裾から手を入れて体を撫でた。俺も、ヒロの腰から背をじっくりと撫で上げる。  はぁっ、とヒロが甘い息を吐いた。 「それ、きもちい。 ……俺たち、マッチングアプリしてなくても、 いつか出会ってたかな」 「かもな」  俺はヒロの顎の先にキスをして、喉仏に歯を立てる。  ヒロはお返しのように俺の胸の突起を指先で押し潰した。 「あ」 「でも俺、アプリで会えて良かったかも。 やりとりしながら、会おうって思ってくれたのも、 恋する前提の場所で、他にも色んな人がいたのに、 俺のこと選んでくれたのも、嬉しい」 「あっ、……く、ぅ」  甘い声で囁きながら、俺の胸を指先で愛撫し、腰を擦り付ける。  立ち上がったもの同士が布越しに触れあって甘い痺れが走る。  じわりと涙が滲んだ。
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