神保町

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「社長、すみません。 腹減ったんで外で飯食いながら作業してきます」 「了解。 今シナリオ上がってるキャラの指定済んだら、 そのままイラストレーターさんに発注かけちゃってください。 カナデとエイジロウは別送で」 「了解です」  俺の隣で同僚がそっと挙手をする。 「あ、私が声優事務所にボイスの手配しときます。 このアプリ、皆さん宅録可の方たちでしたよね」 「ですね。ありがとうございます。 ……じゃ、あとよろしくお願いします」  俺はPCをケースにしまい、小さなオフィスを出た。  近所のチェーンの喫茶店で、サンドイッチを腹に詰め込み、できる作業を全て終えた。  でも、家に帰る気も、職場に戻る気もしなかった。  フレックス制で働いていて、一人で充分生きていけるだけの給料を貰い、家では好きなコンテンツを楽しんで暮らしている。  特に不満もないのに、忙しいと気弱になってしまう。  なんだか、自分の生活が急にわびしく感じて、以前なんとなく調べてみたゲイ向けのマッチングアプリに登録してみようという気になった。 名前:ハヤミ 年齢:二十九才 職業:ゲームアプリ会社勤務 身長体重:178/67 趣味:読書(小説は国内外問わずSF・ミステリ・ファンタジー。東洋文学、中国史、食文化)、料理 自己紹介文:ヤリ目不可。ボトム。少しずつ関係を進めていきたいです。同じ考え方の人と、将来を考えたお付き合いを希望しています。  ライターさんの修正を待つ間に、そんなようなことを書いた。  重たいとは思ったけれど、面倒だったのだ。  会ってからどういう目的の相手かを選別して、また会ってを繰り返すのが。
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