神保町

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 ヒロは、俺を、好きだと言った。  ヒロの言葉の全てを鵜呑みにはしない。  俺以外にやりとりしている相手も、俺の前に会った相手も、これから会う相手も、ヒロにはきっといるだろう。  ヒロとこれからちゃんと付き合いたいかと言われると、正直年が下過ぎる。  ヒロの方だって、九つも上の俺と本気で「恋愛」したいわけではないだろう。  お互いに恋愛経験のない俺たちにとって、これはきっと、練習なのだ。 「あ、ほらここ」  商店街の入り口のアーチを指差す。 「おおー、ここが」  感心した声を上げるヒロに、俺は少し気分がよくなる。 「すずらん通り」  ヒロはポケットからスマホを出した。 「写真撮っていい?」  俺が頷くと、ヒロは俺の肩に腕を回して引き寄せて、二人の顔と、商店街のアーチが入るように写真を撮った。 「えっ」  カシャッと音がして、びっくりした俺の顔と、笑顔のヒロがスマホの中で静止画になる。 「えっ?」  今度はヒロが不思議そうに俺を見て瞬きをする。 「いや、俺も一緒に撮ると思ってなかった」 「あっ、ごめん。 なんか、普段の自撮りのノリでやっちゃった。 インスタとか上げないから。写真、消そうか?」  ヒロの眉尻が下がる。  その表情が、できれば写真を消したくないと言っていた。 「いや、写真自体は別にいいけど。 ……なんか、写真の撮り方が、若者って感じだな」  下がってた眉尻が上がって、眉根がきゅっと寄った。 「別に、俺の世代でも撮らない人は撮らないし、 ハヤミさんの世代でも、撮る人は撮るでしょ?」  初めてヒロが、少し不機嫌な様子を見せて、俺はドキッとした。  こういう、若者が嫌がることを自分が言ってしまったことにもショックを受けた。 「そうだな、悪い」  少し気まずい空気が流れた。  ヒロは、俺の腕を優しく一度叩いた。
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