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「違う。私がこの間、変なのに絡まれてるのを見て護衛してもらってるんだ。王都限定で」
「なんだい、そういうわけかい」
店主はシリウスに向き直るとペコリと頭を下げた。
「騎士様、この通り無愛想な子ですがよろしくお願いしますね」
「はい。お任せください」
「ちょっと!なんで私じゃなくてシリウスさんに言うんだよ!」
リィルがそう怒りながら抗議すると、2人して笑ったのだった。恥ずかしくなったリィルはシリウスの体を押す。
「ちょっと、外で待っててください」
「心得た。ゆっくり選ぶといい」
シリウスは素直に外に出ていく。一々セリフが鼻につくんだよなぁとリィルは思いつつ再び商品に目を移すと、やはりニヤニヤする店主がいた。
「……なんだよ」
「いやぁ?仲がいいなぁと思っただけさ」
「はぁ?今の流れでどうやったらそう見えるんだよ」
「目つきの悪さを指摘されるのを恐れて人に余り寄りつかないあんたが、あそこまで親しく会話をしてるところがさ」
「別に親しくねーよ。単に騎士としてそういう発言をしただけだろ?変な勘違いすんな」
店主はそれでもニヤニヤとした表情を崩さない。リィルはイラついた様子で商品を選ぶとさっさと会計を済ませて足早にケーキ屋を後にした。
しかし、次に目に入った光景がリィルを更にイラつかせた。
「シリウス様、今からお茶でもどうですかぁ?」
「先日の遠征のお話、聞きたいです〜」
「すまない。私は今任務中でして」
「少しだけでいいですからぁ」
ケーキ屋の店先でシリウスが女性達に群がられている。一応断ってはいる。いるのだが、全く効果がないのか女性達はグイグイ迫る。
その状況を見てリィルはカチンと頭にきた。そしてツカツカとシリウスに歩み寄ると、焼き菓子の箱をズイッと前に出す。
「はいはい!“限定”で私の護衛中ですので!お引き取りください!」
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