knight1:私は君の騎士

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「その目つきの悪さ、痛めつけるのに良心が傷まないですむ。いい商品が手に入ったな」 「へっ……こっちは最悪な気分だ」 「ふん。まあよいだろう。しかし……まだ反抗的だな」  男はそう言うと再びリィルの頬を殴る。口の中に広がる鉄の味にリィルは顔を歪めるが、それでも男を睨むことはやめなかった。 「ふむ、これはなかなか楽しめそうだな」 「……悪趣味な奴めっ……」 「生意気な口をきく奴隷には躾が必要だろう?」  そう言って男は何度もリィルを殴りつけた。腹を足を背中を……その痛みにリィルは歯を食いしばるが、時折耐えきれずに声を上げてしまう。 「んぐっ!」  リィルのくぐもった悲鳴など聞こえていないのか、男はさらに拳を振り上げる。痛みで頭が回らない中、リィルは自分の境遇を呪った。  こんな見た目のせいで、与えられる現実は屈辱で。貴族でもない平民は、頷くしかなくて。暴力でしか価値を見出せないとでもいわれてるような仕打ちを受けて……リィルは諦めたように、笑った。 「まだそんな顔をする余裕があるのか。早く泣き喚いて絶望の顔を見せろ」  床に倒れ込むリィルの頭を踏みつけて男は言う。痛みの中でリィルはシリウスの顔を思い出した。結局、自分は守られるような存在じゃなかったんだよな……と、凛々しい騎士の姿を思い浮かべる。ああ、助けて欲しいな……。  ーーその時だった。  突如扉が開かれたかと思うと、男が倒れた。床に突っ伏してピクリとも動かない様子にリィルは困惑する。いったい何が起きた? 「ーー遅くなってすまない」  聞こえた声は凛としたもので、視界の端にうつった煌めく銀髪が目に入る。リィルはそれが誰なのかすぐに理解した。  それは心の奥底でずっと待っていた人。助けて欲しいと願った相手。 「シ、リウス……さ、ん……」 「ああ、もう大丈夫だ。もう君を傷つけるものはいない」
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