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その言葉にリィルは慌てて否定する。しかし、シリウスは首を小さく横にふった。そしてそのまま言葉を続ける。
「だから、次の機会に私にチャンスを与えてほしい。また君が王都に来た時に、私に君を護衛する権利をくれないだろうか?」
その言葉にリィルは驚く。シリウスはそんなリィルを見つめると、ふわりと優しく微笑んだ。その微笑みにリィルの胸が高鳴る。顔が熱くなるのを感じた。
「私に、もう一度君を守らせてほしい」
「……はい」
ああ、この感情はなんだろう?今まで感じたことのない思いに、リィルは戸惑う。だけど嫌ではなくて……むしろ嬉しくて、自然と笑みが溢れた。
そんなリィルを見て、シリウスも嬉しそうに笑ったのだった。
「……君は、可愛く笑うんだな。同じ男とは思えない」
「へっ……ああ、まぁ……その、はい」
「男性に可愛いは失礼だったかな。すまないね」
「いえ、その……お気になさらず」
リィルは乾いた笑いを漏らす。シリウスは未だにリィルが女とは気づいていないようで、驚いた。じゃあこの騎士は男相手にあんなに甘いセリフを吐いていたと?というか、目つきの悪いこんな女に可愛い?視力は大丈夫か?それとも脳か?
そんな風に考えていたリィルは百面相もどきの顔をしていたらしく、それを見ていたシリウスがふっと笑みを浮かべた。
「君は、本当に面白いな」
そう言って微笑むシリウスの表情にリィルはまたしてもドキリとした。
ああ……これはもう戻れないかもしれないなと、リィルは思ったのだった……。
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