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確かに、前回シリウスが自分の騎士だったら……などと思った。しかしあれは気の迷いというか、過ぎた欲望というか。小さい子どもが「お姫様になりたい」というのと同じで、あくまで憧れのようなもので。
だから、自分の護衛として会うのも気まずいし、守ってもらうなんて……思うことが図々しいのだとリィルは思う。しかしふと頭に過るのはシリウスが優しく微笑む顔や真剣な表情、甘い言葉の数々である。ああもうっ!とリィルは頭をぶんぶんふった。
そんなことを考えていたら目の前に影がかかりリィルは顔を上げる。
「やあ」
「うぐっ……」
そこにいたのは今最も会いたくない人物で、思わず変な声が出た。そんなリィルに気にする様子もなく、深々とお辞儀をする男ーーそう、シリウスである。
「あー……シリウスさん。どうも、お久しぶりです」
「本当に久しぶりだね。あれから体調はどうだろうか?」
「もう大丈夫です。その節は大変お世話になりました」
「気にすることはない。私は私の責務をまっとうしただけだ」
シリウスの柔らかな微笑みに、リィルは少しだけ顔を赤くする。しかし、ここでこのまま流されたら王都にいる限りこの男の隣を歩くハメになる。めちゃくちゃ目立つ。それはもう目立つ。絶対に避けたい。
リィルはその目つきの悪さを隠そうともせず、シリウスを少し睨みつけた。
「あの、あの時は思わず了承しましたが、今回のことは貸し借り無しです。だからシリウスさんもこれ以上私を護衛とかしなくて結構ですので」
「しかし……」
「私がそうして欲しいと言っているのです。これ以上は受け付けませんっ」
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