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「ご存知の通り、私目つきが悪いんで!嫌なんですよね、人に見られるの。この顔で変なやつに絡まれるのも多いし。だいたいがクズみたいな男ばっかですけど。とにかくっ!そういう理由なんで、シリウスさんに隣にいられると困るんです」
一気にそう捲し立てるリィルに、シリウスは呆然とする。しかし、次第にその顔は何かよくわかっていないというかそんな風な表情をみせる。絶対わかってないなこの男とリィルは思いながら、すぐにハッとして慌てて頭を下げた。
「す、すみません!私……失礼なことを……」
「……いや」
「あの、でも本当に護衛とかいらないのでっ」
「先程の言葉を聞いたら尚更、君の護衛は必要だ」
シリウスの騎士としての心に火をつけてしまったようで、リィルは己の言葉を悔やむ。こんなはずじゃなかった……そう乾いた笑いが漏れた。
「騎士に守られるなど、男として嫌なのかもしれないが何も恥ずかしがることはない。身分の高い当主は騎士を連れている」
「私はただの庶民ですが……」
「それに、君は目つきが悪いと言ったが私はそうは思わない」
そう言うとシリウスはリィルの顔をジッと見つめる。リィルはドキッとして目を逸らすが、シリウスはそれでも見つめ続けるから、たまったものではない。
「あの、ちょっと……見すぎです」
「ああ、すまない。……やはり私には、君の目つきが悪いとは思えないな。確かに鋭さはあるが、意志の強そうないい瞳だ」
「っ!」
シリウスは優しい微笑みでリィルを見つめる。リィルは思わず顔を逸らした。顔が熱くなるのを感じて、リィルは俯いてしまう。
気づけば周りがこちらに注目し始めていた。それはそうだ、この国1番の優秀な騎士と何やらモメている現場など気になるだろう。
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