knight1:私は君の騎士

2/15

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「ないものはないんですよ、だから通して……」  リィルの抵抗は男達にとっては、ただの強がりにしか聞こえない。男達は下品に笑いながらリィルを囲う。 「いいから出せや」 「ないものはないですってば!」 「ならその服よこせや」 「それは困りますって!この服仕事着なんですから!」 「じゃあ物好きな金持ちに売るか。男の奴隷も重宝されるからな」  目の前で最悪の言葉を聞くリィルは少し体が震える。どうしようと悩みつつ、自分はご主人様のお使いの途中なのになぜこんな目に合わなければならないのかと嘆いた。  リィルの態度は相手を睨むような目つきになった。男達は苛ついたのだろう。リィルの腕を掴み連れて行こうとする。 「ちょっ!離せっ!」 「おっと、暴れるなよ。痛いのは嫌いだろー?」  ナイフをチラつかせる相手にリィルは恐怖からヒュッと喉を鳴らした。まずいまずいっ!と頭では理解していても体が動かない。このままだと相手の思惑通りに連れて行かれる。 「っ、やめろって!」  リィルは相手の腕を思いっきり振り払った。そして持っていたお使いの品物、りんごの入ったカゴで思いっきり相手の顔を叩く。 「ぶべらっ!?」 「ひぃっ!やっば、つい……」  思わずやってしまったリィルだったが、相手の顔がりんごのように真っ赤になるのを見て少しスッキリした。もう1人も突然のことに啞然としている。そんな相手の隙を見逃さず、リィルは走り出す。後ろからは男達の怒声が響くが逃げるが勝ちである。  しかし、相手は諦めが悪いのか追いかけてきた。 「嘘だろ!?もう、なんなんだよ!」  リィルは舌打ちをして、自分の運の無さを恨んだ。普段もこの見た目から、変な輩にばかり絡まれるリィル。リィルの中で男というのは、こういうクズしかいないのかというくらい印象が悪かった。 「捕まえて売れば、いい金になるぜ!」
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加