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女性達は突然割り込んできたリィルを睨みつける。しかしリィルが鋭い目つきで睨み返すとすぐに顔を青ざめて去っていった。
ふんっ!いい気味だ!そう鼻を鳴らすリィルをシリウスは呆然と見つめる。そして顔を顰めてリィルに告げた。
「リィル。今のはいけない。女性に敬意を持って優しく接するのが騎士として……いや、男としてのマナーだ」
「そりゃあすみませんでございました。せっかくのお美しい女性達とのひと時を邪魔してしまって」
リィルがわざと嫌味を言えばシリウスが眉根を寄せる。
「君、今日はどうしたんだい?刺々しいというか……口が悪い気がするが」
その言葉にリィルは深くため息を吐いた。
「……別に、いつもこんな調子ですよ」
「そうか……?」
「ええそうです。だからほっといてください!」
リィルはそう言って再び歩き出すとシリウスは不思議そうな顔をして後に続いた。まるで納得していない様子のシリウスにリィルはまたため息を吐くのだった。
「……今だけは、私の騎士なんじゃないのかよ」
その小さな呟きはシリウスには届かなかった。リィルも自分自身の感情に戸惑う。男と間違えられたままで、こんな面倒くさい性格で接して、それもこれも全てシリウスの顔がいいからいけないんだとリィルは結論づける。
あの顔が全ての元凶。人を惑わすのだとうんうんと頷いた。
「ん?リィル、少し待っていてくれないか。あそこのご婦人が困っている様子なんだ」
シリウスの言葉に目を向けると、確かに噴水広場のそばで何やらキョロキョロしている女性がいる。リィルは前もこれで攫われたけどと思ったが、ここから互いに見える距離なのでその心配はないかと了承した。
「騎士様のお勤めしっかり果たしてきてくださいよ」
「ありがとう。すぐに君のもとへ戻る」
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