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knight3:私の主人
扉が開くと、そこには裸のシリウスがいた。リィルは咄嗟に背を向けたことと、湯船が乳白色だったことで何とか女性である体つきはバレなかった。
リィルの挙動不審は明らかだったが、少し首を傾げるだけでシリウスはとくに気にしていないようだった。
そのままシリウスは軽く湯を浴びて、湯船に入ってくる。リィルとは少し距離をおいて横並びとなった。なんだこの状況とリィルは1人焦る。シリウスがリィルのことを男だと誤解したままだった弊害がこんな結果になるとは……と嘆いた。
それにしても……とリィルは視線をシリウスに向ける。
ーー何この人!なんでこうも色気ダダ漏れなの!?
水の滴るいい男というのはこういうヤツのことを言うのか?と思わず見惚れてしまう。その雰囲気に吞まれそうになり慌てて首を振った。
そしてそんなリィルを気にすることもなく、湯船に浸かりながらシリウスは話し始める。
「今日は本当にすまなかった。私がついていながら……」
「いや、全然。こっちこそ、シリウスさんに跪かせちゃったし」
「そんなことは気にしなくていい。私は騎士だ。守ると決めた主人のためならば、このくらいはなんてことない」
「……」
ああ、この人はどうあっても騎士なんだなとリィルはシリウスを見つめる。この人のことだから、きっとあの貴族の野郎が主人でも躊躇いなく守っていたのだろうと思うと……なぜか胸がジリッとした。
「……あの時、シリウスさんがきてくれた時、私は……ほっとしたんです」
リィルは少し俯きながら、小さな声で言葉を紡ぐ。あの時の思い、そして感謝を伝えるために。
「あんな理不尽な難癖、慣れっこだったのに。歯向かって、どうなるかも経験済みだったのに。我慢できなくて、ああ……また痛い思いをするのかなって考えてたら、シリウスさんが前にきてくれて……」
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