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「このっ!しつこいなっ!」
男の1人がナイフで斬りかかってくる。リィルは間一髪で避けたが、その際にもう1人が先回りをしていた。後ろから羽交い締めにされるリィルだが、その目は諦めていないと訴えていた。しかし、そんなリィルの抵抗もむなしく男達はニヤニヤと笑うばかりである。
「大人しくしといた方がいいぜ?男でも傷物にはなりたくないだろ?」
「おーおー、それは勘弁願いたいね」
リィルは焦る。状況がまずい。ここからどうやって逃げ出すか考えて……その時に、凛とした声がその場に響いた。
「その者を離せ」
「……!?」
その声に男達だけではなく、リィルも驚く。なぜならその声の持ち主が……この王国の近衛騎士団一の優秀な人物、シリウス・バイオレットだったからだ。
目を引く美しい銀髪に琥珀色の瞳、そして色白の肌。背も180cmくらいはあるほど申し分ない高さで、美丈夫という言葉が相応しい男。
男達もさすがに相手が悪いと判断したのか、焦り出した。
「なんで近衛騎士団の奴がこんなところにっ」
「聞こえなかったのか?私は、離せと言っている」
いつの間にかシリウスはナイフを待つ男の鳩尾に拳を一発、その後にリィルを羽交締めにしていた男の後ろに立ち、剣の柄で腹に一発食らわせていた。
「かはっ!」
男達は気を失いその場に倒れ込む。急に支えがなくなりリィルはよろけるが、シリウスが倒れないよう支えてくれる。
「大丈夫ですか?」
「……あ、あぁ」
自分が助かったことを理解するのに、数秒かかったリィルはすぐに我に返る。まだお礼も言っていなかったと慌てて頭を下げた。
「助かりました!ありがとうございます!」
「いえ、当然のことをしたまでです」
そう言って微笑むシリウスはまさに騎士そのもの。男でもやはり真っ当な仕事の奴は良いやつがいるもんだとリィルは感心する。
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