knight3:私の主人

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「あんな短い時間のために、全身を着飾って社交の場に相応しい振る舞いをする方達ってすごいですよね」  リィルは思ったことを口にする。それは嫌味でも羨望でもない。純粋な気持ちから出た言葉だった。 「ああ、そうだね。だが、貴族にとって社交の場というのは重要なんだ。その家の品格を知らしめる場でもある」 「なるほど……大変ですね」 「リィルもどこかのご令嬢と結婚する ことになれば、他人事ではなくなるな」  シリウスが口の端を上げて言う。それに対してリィルは、ありえないと首を横に振った。 「私は平民ですよ?こんなのを選ぶ貴族の方がいるわけがない」 「ふむ、まあ……貴族はプライドが高い。自分が惚れる相手が下の者だと、そうは思われたくないのだろう」 「そりゃあそうでしょうよ」 「だが……」  シリウスはカトラリーを置きリィルを見据える。その綺麗な琥珀色の瞳にリィルは思わず見惚れてしまった。 「そんなことも関係なくなるほどに燃える恋というのも、私は少し憧れる」 「っ!?」  シリウスの真剣な言葉にリィルは顔が熱くなる。それを見て、ふっ……と微笑む姿にさらに熱がこもりそうだった。まてまて、シリウスはただの考えを言ってるだけ。自分に向けられたものではないとリィルは心を落ち着かせ、食事を続ける。味はなんだか、よくわからなかった。 *** 「……で?何にもなかったの?」 「え?ああ、はい。とくには?」  あの後リィルは馬車に乗って送るというシリウスを説得して1人で馬車に乗り帰ってきた。そして待ち構えていたエレナにより、女子会という名の報告会を開かされていた。 「シリウスの屋敷まで行って、一緒のお風呂に入ったのに?」 「ちょっ、それは不可抗力!だいたいあの人まだ私のこと男と勘違いしてるんですから」
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