knight3:私の主人

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 ーーああ、やっぱり……私は……この人が好きなんだなぁ。  平民の自分が貴族であり騎士であるシリウスとどうにかなる未来など望みは薄いし、この想いは報われることはない。ならばせめて誤解されたままの男としてシリウスと接していようとリィルは決心したのだった。 「よし、ではもう一度……」 「いや!もう無理です!」 「何を言う。まだ1フレーズしか踊っていないだろう」 「いやいや、十分ですよ!もうやめましょうよ」 「そんなことではこの先困るぞ?」 「絶対に困りませんからっ!」  そんなやり取りはシリウスが他の騎士に呼ばれるまで続いた。 ***  舞踏会から数日、リィルはまた王都にエレナのお使いできていた。あれ以来シリウスとも、もちろん会ってはいない。王都でしか彼との接点はないから、当然である。そんな今日も、シリウスが突然現れるのではとリィルは周囲を警戒するが、一向にその姿は見えない。  ーー珍しいこともあるんだな。というか、今までがピンポイントで出会いすぎていたのか。そりゃそうだわ、これが普通。そう……現実だ。  リィルは少し寂しそうな顔をして、王都の街を歩いた。賑わう人々の中、ヒソヒソと耳に入る声。嫌な笑みを浮かべてこちらを見る視線。  ああ、この感覚だとリィルは舌打ちをする。シリウスが隣を歩いてくれていた時はなかったもの。忘れてしまっていたもの。目つきの悪さ、男みたいなその見た目は蔑まれる格好の的。  ーーやっぱり、守られていたんだな。  王都限定で自分の騎士として護衛をしてくれていたシリウスへ、リィルは今更ながら感謝をする。なくなって初めて気づくのはこの事かと、乾いた笑いが漏れた。 「おーおー、兄ちゃん。目つきやばいな」 「ちげーよ、こいつ女。この見た目で」 「ギャハハハ!マジかよ、ありえねー」
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