knight4:私の手を握って

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「前々から思っていたが、君は私をなんだと思っているんだい?私は自分の発言に責任をもたないような男ではないよ」  リィルの言葉にシリウスは心外だとばかりに言う。それを言われてしまうと、リィルにはもう何も言い返せない。しかし、このまま流されるわけにもいかない。 「あの、シリウスさん……私は……」 「ああ、すまない。君の意思も聞かずに話してしまったね」  リィルが何か言おうとすると、それを遮るようにシリウスが言う。そしてそのまま再度手の甲に口付けようとして、慌ててリィルは手を引っ込めた。 「ちょ、何してるんですか!?」 「いや、私の気持ちを知ってほしかったのだが……」 「もう十分伝わってますから!本当ちょっと離れてください!」  リィルが慌てるとシリウスは諦めたのか、立ち上がって少し離れた位置に立つ。リィルはシリウスに見られないように深く息を吐いた。心臓が爆発しそうだ。リィルは平静を装うために深呼吸をする。すると、そんな様子のリィルを見てシリウスが苦笑する。 「すまない……少し性急すぎたね」  先程の真剣な顔つきも今の少し困ったような笑みもどちらもリィルの心をざわつかせる。決して報われないと思っていた。それがこんな形で知ることになるなんて……リィルはシリウスをチラリと見る。  この人が自分の騎士になってくれたらと何度思ったことか。この人に最大限想われることは夢のような話なのに、リィルはその手をとれない。身分の差、リィルの見た目、シリウスが国一番の優秀な騎士という肩書き。そのどれもが、想いに枷をつけてしまう。  ーーだめだ、この人を縛ることなんて……できないっ。  リィルは意を決してシリウスに向き合うことにした。自分の本心は隠して、ただシリウスの立場を思って……そう、決めたのだ。 「シリウスさん、私は……」 「リィル」
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