knight4:私の手を握って

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 しかし、それを言う前にシリウスが言葉を被せる。そしてリィルは言葉を詰まらせたのだった。 「すまない、だがこれだけは約束してほしい。私の立場などを気にして偽ることはやめてほしい」 「っ……」 「私は君を好ましく思っている。だから、君がもし私と同じ気持ちならばその時は……」  シリウスはそこで一度区切ると、とても甘い顔を浮かべて、リィルに微笑んだ。 「私に君を守らせてほしい。この身滅ぶその時まで……永遠に」  シリウスの言葉にリィルは顔を真っ赤に染め上げ、直後に眉根を寄せる。それは決して嫌悪感からではなく、嬉しくて……でも彼には相応しくないと思ってしまったが故に出たものだ。 「リィル?どうした?」 「っ、いえ!あの……ありがとうございます」  シリウスの真剣な想いにリィルは躊躇う。ダメなのにと思えば思うほど、頭の中でシリウスを意識してしまう。リィルはシリウスが好きだ。先程の言葉も夢にまでみたものだ。しかし、ここで流されてはならない。 「っ……シリウスさん、お気持ちは大変嬉しいんですが、やはり」 「リィル」  リィルの言葉の続きを遮るシリウス。その顔は甘く優しいものではなく、騎士の時の凛々しい顔だった。 「私は、偽らないでくれと頼んだ」 「……でも、その……」 「何も怯えることはない。この先何があろうとも、私の手を握っていてくれ」  差し出される手。リィルはそれを見て、苦虫を噛み潰したような顔をすると、思いっきりその手を振り払った。  パシンッという乾いた音が部屋に響く。シリウスは目を丸くし、そんな彼をリィルは睨みつけた。彼が褒めてくれた鋭くも意志のある瞳で。 「しつこいんだよ、さっきから!迷惑なんだよ、あんたが……“おまえ”が側にいると」  シリウスのことを“おまえ”呼ばわりして、リィルは言葉のナイフを突き立てる。
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