knight1:私は君の騎士

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 シリウスは暴れるリィルを落とさないようにと押さえる。これはもう何を言っても無駄なんじゃないかと思うくらい、シリウスには自分の言葉は届かないようにリィルは感じた。これが女性だと思われていれば少し対応が違ったのかもしれない。でももう既に勘違いされてるのだ。今更、男ではなく女です!など訂正するのも面倒だった。 「はぁ……」  諦めたようにため息を吐くリィルにシリウスは微笑む。その微笑みはまさにイケメンの騎士そのもので、女性なら誰もが惚れてしまうだろうという代物。しかし今の状況で屈辱を与えられるリィルには、いけすかない奴という感想しか出てこない。 「着きましたよ」 「あ、あぁ……ありがとうございます」  やっと着いた馬車の前でリィルはシリウスに礼を言った。それに気をよくしたのか、シリウスは嬉しそうに笑う。その笑顔を見た女性は誰でも落ちてしまうのではないかと思うくらい魅力的だった。  ーー性別も見極められないようなやつ。人の話も聞かないときた。もう絶対にこの騎士とは関わらない!  最後まで自分を男と勘違いしたままのシリウスに対して、心の中で強く誓うリィルであった。  そんなことがあってから数日後のこと、リィルはまたお使いを頼まれ王都に来ていた。もちろんあの出来事があった日以来の訪問である。  普段勤めている屋敷は王都より少し離れた場所にあり、住み込みで働くリィルもそこに住んでいた。だから王都に行く用事があると、リィルは決まってケーキ屋に寄っていた。 「んー、おいしいっ」  店の前のテラス席で注文したいちごタルトを頬張る。一応お使いという仕事中だが束の間の休憩ということで、リィルはよくこの店で食べていた。まあ後は屋敷に戻るだけだしと気は抜けていたのは否めない。 「おや?君は先日の……」 「んぁ?……げっ」
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