knight4:私の手を握って

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 リィルが睨みつけてもシリウスは表情を変えない。そのままゆっくりと口を開いた。 「価値がないなど決めつけないでくれ。確かに、私と君では立場が違う。しかし、それでもこの想いは消えはしない。いくら、身分の差があっても……君が平民だとしても……君が本気で私を望むなら、私は君のことを一生守る。絶対だ」  真っ直ぐにリィルを見つめる瞳には曇りがない。本気だと伝わってくる。なんで……とリィルは歯を食いしばった。どうして諦めてくれないんだと。 「っ!いい加減にしろよ!何が優秀だ?何が騎士だ?おまえなんかただの偽善者だろ!」 「ああ、そうさ。私は偽善者だよ」  シリウスはリィルにゆっくりと近づく。迫ってくるその姿にリィルは舌打ちをして、後ずさった。 「君だって知っているだろう?私はこの国の騎士だ。この国を愛している。この国の為に命をかけられるし、民の為に剣を振るえる。でも、君が関わるなら話は別だ」  リィルとの距離を詰めてシリウスはその手を優しく握る。その手の温かさに涙が出そうだったが、歯を食いしばって耐えた。 「騎士として、君を守りたい……それが私の本音だ。偽善者でもいいさ、それで君に気持ちが伝わるのなら」 「っ……」  もうダメだと思った。どんなに拒んでもシリウスには響かない。それでも、ここで認めたら……リィルはキッと睨みつける。その時にシリウスと目が合った。 「……君は嘘をつくのが下手だな」  それは穏やかな声で、リィルはもう全て投げ出して縋りたくなるほどに心が絆されかけていた。 「リィル、私は君を諦めない。君が私に心許してくれるまで……いや、たとえ許してくれなくても君の騎士として側にいよう」  シリウスの真摯な言葉にリィルは泣きたくなる。しかし、それを必死に堪えて口を開いた。 「……おまえ、馬鹿じゃねぇの?こんな私なんかにそこまでしてさ……」
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