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こんなことをされて、喜んでしまう自分の浅ましさにリィルは嫌になる。
「嫌いではないです」
「なら受け取ってもいいじゃない?」
「……そうですね」
リィルが頷くとエレナは満足そうに笑う。そして花束を持ったままのリィルに言った。
「あー、羨ましいなぁ。私も素敵な人に贈り物をいただきたいわ」
「エレナお嬢様にはまだお早いのでは?」
「甘いわよリィル。今からいい人を見つけておかないと。いい男はすぐに取られちゃうんだから。いい女になるために常日頃から努力しなきゃダメなのよ……そうだわ!リィル今日は王都に一緒に行きましょう。新しいドレスがみたいわ」
エレナの発言にリィルは顔を顰める。王都に行けばシリウスに会う確率が高くなる。なるべく会わないようにしたいのに、自ら行くのは避けたい。
「……わざわざ行かなくてもお屋敷にお呼びすればよいのでは?」
「違うわよリィル。ただドレスが見たいのではないの。いずれ素敵な方と街を歩く時に失敗しないように練習したいのよ。そう、デートっぽくしながら見たいのよ!」
エレナの力説により、リィルは仕方なくお供をすることになった。
***
王都のブティックでエレナがあれもこれもと試着をする中、リィルはげんなりしていた。今のところシリウスには見つかっていないが、いつ現れるかわからない。
それに加えて、この煌びやかなドレスの数々に目が眩む。エレナは店員と楽しそうにお喋りをしながら選んでいる。それを見て、リィルは理解ができなかった。リィルにはこのドレス達が嬉しいものではなく、鉛のような……まるで身動きの取れない枷のようなものに思えたから。
ーーこれも、似合わないと思っている故か、な。
リィルは一着のドレスに目を留める。琥珀色で銀のレースがあしらわれているそれは、シリウスの瞳と髪の色と同じで……不思議と惹かれてしまった。
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