knight5:命令だ

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 こんなことをされて、喜んでしまう自分の浅ましさにリィルは嫌になる。 「嫌いではないです」 「なら受け取ってもいいじゃない?」 「……そうですね」  リィルが頷くとエレナは満足そうに笑う。そして花束を持ったままのリィルに言った。 「あー、羨ましいなぁ。私も素敵な人に贈り物をいただきたいわ」 「エレナお嬢様にはまだお早いのでは?」 「甘いわよリィル。今からいい人を見つけておかないと。いい男はすぐに取られちゃうんだから。いい女になるために常日頃から努力しなきゃダメなのよ……そうだわ!リィル今日は王都に一緒に行きましょう。新しいドレスがみたいわ」  エレナの発言にリィルは顔を顰める。王都に行けばシリウスに会う確率が高くなる。なるべく会わないようにしたいのに、自ら行くのは避けたい。 「……わざわざ行かなくてもお屋敷にお呼びすればよいのでは?」 「違うわよリィル。ただドレスが見たいのではないの。いずれ素敵な方と街を歩く時に失敗しないように練習したいのよ。そう、デートっぽくしながら見たいのよ!」  エレナの力説により、リィルは仕方なくお供をすることになった。 ***  王都のブティックでエレナがあれもこれもと試着をする中、リィルはげんなりしていた。今のところシリウスには見つかっていないが、いつ現れるかわからない。  それに加えて、この煌びやかなドレスの数々に目が眩む。エレナは店員と楽しそうにお喋りをしながら選んでいる。それを見て、リィルは理解ができなかった。リィルにはこのドレス達が嬉しいものではなく、鉛のような……まるで身動きの取れない枷のようなものに思えたから。  ーーこれも、似合わないと思っている故か、な。  リィルは一着のドレスに目を留める。琥珀色で銀のレースがあしらわれているそれは、シリウスの瞳と髪の色と同じで……不思議と惹かれてしまった。
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