53人が本棚に入れています
本棚に追加
これが似合うような令嬢が、彼には相応しい。どんなにシリウスが想ってくれても、どんなに自分が彼に惹かれていても、それだけでは届かない。
「ーーそれが気になるのかい?」
背後から聞こえた声にリィルは驚いて振り返る。そこには、今一番考えていて、一番会いたくない人物ーーシリウスが悠々と佇んでいた。
「シリウス、なんで……」
「残念だ。王都にきたら私のところに一番にきてくれる約束だったというのに」
「そんな約束はしてない」
冷たく返してもシリウスは微笑むばかりで、リィルはバツが悪そうに顔を背ける。そんなリィルの態度を気にすることなくシリウスは先程リィルが見ていたドレスについて話し始めた。
「これは私の目の色に似ているね……君も私のことを意識してくれているということかな?」
「そんなわけないだろ」
「そうかい?まぁ、このデザインもいいが、君にはいずれ私が贈ったドレスを着て欲しいものだね」
「……お断りだ。私には似合わない」
そう言ってリィルが離れようとすると、シリウスはそれを阻む。
「そんなことはないだろう。私の色に染まる君の姿、是非とも見てみたいものだよ」
「っ……言ってろ」
リィルが舌打ちで返すがシリウスは余裕の笑みを浮かべる。そして、そっと耳元で囁く。
「知ってるかい?男がドレスを贈るのは、それを脱がせるためだ」
「〜っ!変態だなっ」
リィルは真っ赤になってシリウスから距離をとる。シリウスはくすりと笑っていると、2人の様子に気づいたエレナがニコニコしながら近づいてきた。それを見てシリウスはいち早く跪き丁寧に挨拶をする。
「これはエレナ様。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。お久しぶりです」
「久しぶりね、シリウス。今日もリィルの騎士として護衛をするの?」
「ちょ、お嬢様」
「はい、僭越ながらお供させていただきます」
最初のコメントを投稿しよう!