knight1:私は君の騎士

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 不意に声をかけられリィルはそちらに顔を向けるとあからさまに嫌な反応をする。 「また会ったね」 「あ、あぁ……どうも」  リィルは先日のことを思い出して少し気不味くなる。そりゃ誰だって執事服をきた状態で傍目から男と思われてる中で騎士にお姫様抱っこされたらそうなる。そんなリィルの心境など知る由もないシリウスは本日もリィルは執事服を着ているため、男と勘違いしているのだろう。口調というか、声質の雰囲気が女性に対するものより若干砕けている感じがした。 「今日もお使いかな?偉いね」 「いや、まあ……」 「今は休憩中といったところかな?」 「あー……うん、そうですね」  そんな会話をしながらリィルは目の前の騎士を訝しげに見つめる。本当にこの騎士の目は節穴なのだろうか、と。確かに自分もこの状態で女というには説得力がないのはわかる。だがしかし、仮にも騎士。今までに何人もの令嬢を相手にしてきたであろう騎士が、目の前の会話する相手が女かどうかもわからないものなのかとリィルは少し呆れていた。 「あ、そうだ」 「?」 「良かったら王都での君の用事が済むまで私が護衛をしよう」 「は?」  シリウスの発言にリィルは耳を疑った。今この騎士は自分を護衛するとか言ってきたか?うげぇ、面倒だなと眉根を寄せる。善意100%なのだろうがこんな風に絡まれる時点でも注目を浴びていた。これが、隣を歩くとなれば尚更周囲の視線は増えるだろう。  もう自分の運の悪さを恨むしか他ない。 「いや、ありがたいのですが。騎士様の手を煩わせるわけには……」 「そんなこと気にしなくて大丈夫。民のために尽力するのが我々騎士の勤めなのでね」 「いやぁ?なら他の方にその立派な騎士道を説いてやってくださいよ」 「私は君に言っているんだ、リィル・テンペスターくん?」 「……っ!」
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