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「おまえも何勝手に返事してんだよ!近衛騎士団の見回りは?仕事しろよ!」
リィルの言葉を無視して2人は話を進めていく。シリウスには強く出れるリィルだが、エレナにはそんなことはできずあたふたしてしまった。
そんなリィルの様子に何か閃いたのかエレナはシリウスに声をかける。
「ねえ、シリウス。私今日は将来の素敵な方とのためのデートの練習をしているの。だからエスコートしてくれないかしら?」
「ちょっとお嬢様!何言ってんですか!こんな奴に頼むなんて」
エレナの発言にリィルは驚いて否定するが、エレナは意見を曲げない。
「何言ってるのよリィル。シリウスにエスコートされた方が雰囲気でるじゃない。それとも……嫉妬?」
ニヤニヤとするエレナにリィルは顔を顰める。
「馬鹿なこと言わないでください。そんなわけないでしょう」
「ふふっ、ならいいじゃない。シリウスもいいわよね?」
「もちろん、喜んで引き受けましょう。では、お手をどうぞ」
シリウスはエレナに手を差し出す。それを躊躇いもなく繋ぐエレナ。一歩後ろでそれを見たリィルはギュッと胸が痛くなった。こうなるべきだと望んだのは自分なのに。
ーーきっつ。これは堪えるな……。
2人の後ろで眉根を寄せるリィルにシリウスは気づかれないように小さく笑った。そして隣のエレナにそっと囁く。
「少々意地が悪すぎませんか?私のリィルを悲しませるのは本意ではないのですが」
「あら?まだ私のリィルのはずよ。それに、素直じゃない子には時には厳しく接してあげないとね」
「わざとこのような事をするなんて、エレナ様も人が悪い」
「私はリィルに幸せになってほしいだけよ。その為には、あなたの協力が不可欠よね?」
エレナの企みにシリウスは口元に弧を描く。
「リィルがもっと私に貪欲になってくれるのでしたら、いくらでも我が主人を欺きましょう」
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