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2人は意地の悪い笑みを浮かべていた。
***
シリウスの完璧なエスコートを間近で見せられるリィル。エレナの望みを叶えつつ、スマートな対応をしてエレナを見惚れさせる。
シリウスにエスコートされて王都のブティックを見て歩くエレナは、明らかに上機嫌になっていた。ニコニコするエレナにリィルは愛らしいなと思いながら頬を緩ませる。エレナが嬉しいと自分も嬉しい。
しかし、そんなエレナとそれをエスコートするシリウスの2人を見るリィルの顔は曇っていた。
そんなリィルに気づいたのか、シリウスが声をかける。
「どうかしたかい?」
「いや……別に」
リィルは素っ気なく返事をすると、そのまま視線を逸らした。その態度にシリウスは苦笑いする。
「君は本当に素直じゃないな」
「はぁ?勝手に何か察するのやめてもらえますー?」
リィルの言葉にシリウスは微笑む。それは、嬉しさと楽しさの混じった微笑みで、それがまた余計にリィルをイラつかせた。
そんな2人を見てエレナはニヤニヤしていた。
夜、自室でリィルはベッドに横になりながら今日のことを考える。シリウスが目の前でエレナをエスコートしている姿。触れているその手を羨ましいなどと思ってしまい、舌打ちをする。自分で拒絶しておいて、なんてザマだと嘲笑した。
「はぁ……私って本当に馬鹿だな」
そう呟くと、リィルは疲れが溜まっていたのかすぐに眠りについた。
それから一週間後。エレナに先日のドレスを受け取りに行ってほしいと頼まれたリィルは再び王都にきていた。シリウスには会いたくなかったので、さっさとブティックに足を運ぶ。
「すみません。エレナ様のドレスを受け取りにきました」
「はいはい!できていますよ!お待ちくださいね」
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