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「〜っ!ダメだ!触れなくてもおまえならエスコートできるだろ」
出されるシリウスの手を無視してリィルは歩き出す。そんな態度にクスリと笑いシリウスはリィルの隣で歩く。
リィルは何故こんなおかしな状況になったのか今朝のことを思い出した。確かにエレナは何やら楽しそうにしていた。ご機嫌だなと思っていたが、まさかこれのことだったとは……と仕組まれたことに、してやられたと大きなため息を吐く。
「リィル、危ない」
考え事をして歩いていたからか、前から人がきたことに気づかないリィルをシリウスが腕を出して止める。触れないと約束をしたからか、決して手も繋がないし、腕も組まない。それでもこうして、スマートに助けてくれるシリウスに、リィルの胸は高鳴り頬が熱くなる。
「あ、……りがと」
「君を守るのは私の役目だからね。さて、次はどこへ行こうか?」
「どこでもいい」
「ならば、私に決めさせてほしい。リィルの為に完璧なエスコートをしてみせよう」
柔らかく微笑むシリウスの顔を見ていられず、リィルは顔を背ける。そんな反応にもシリウスは笑うだけだった。
シリウスに案内されたのはリィルがよくお使いで通うケーキ屋だった。そこのカフェテラスでお茶をしようということなのだろう。
「リィル、こちらへ」
そう言いリィルが座れるように椅子を引いてくれる。先程からそうだが、シリウスは扉を開けたら、さりげなく人にぶつからないように外側を歩いてくれたりと本当にエスコートされているんだなとリィルはむず痒さを感じてしまった。
それでもリィルはお礼を言って素直にその席に座る。シリウスはそんなリィルに優しく微笑む。
「君とこうしていられるのはとても嬉しい。ありがとう」
「……別に、エレナ様に言われたからだし」
「それでもだ。私は君と二人でこうしてデートできるのを楽しみにしていたんだよ」
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