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シリウスの言葉にリィルはドキリとしてしまう。そして慌てて否定した。
「ふざけんな、デートなんかじゃない」
「そうかい?私は君を好ましいと思い、君も甘んじてそれを受け入れてくれている。そんな男女2人が外を歩けばそれはデートだろう」
「受け入れてないから!勝手に都合よく妄想するな」
リィルはまるで心を見透かされたのかと焦るが、シリウスは気にせず余裕の笑みを浮かべる。
「そうか。それなら私の片思いというわけだね」
シリウスの言葉にリィルは息を呑む。笑っているのに、まるで拒絶しないでほしいと縋るようなシリウスの表情にリィルは何も言えなくなった。そんな顔をさせたいわけじゃない、なのにーー……
「……っ……勝手にしろ」
そんなことを言ってしまう自分にリィルは呆れるが、シリウスは嬉しそうに微笑むのでもうどうでもよくなってしまった。
それからケーキを頼み紅茶を飲みながら談笑をする2人。リィルは先程までのモヤモヤした気持ちやらはケーキのおかげですっかり吹き飛んでいた。いちごタルトを美味しそうに食べるリィルを眺めてシリウスは優しい笑みを浮かべる。
「そんなに見るなよ、食べづらい」
「ああ、すまない。君がとても幸せそうな顔をするから、たまらなく愛おしくなってしまってね」
「なっ、そんな変な顔してないだろ!」
リィルが慌てて自分の頬を触るのでシリウスはクスリと笑った。
「いや?とても可愛らしいよ」
そんなストレートな物言いにリィルは顔を真っ赤にする。そして誤魔化すようにケーキを頬張った。ふと、そこで手が止まる。そういえば、ケーキも紅茶も知らない内にシリウスが注文していた。どうしてこうもリィルの好みを当てられたのか……。シリウスの方のケーキはレモンのチーズタルトだ。そちらもリィル好みのもの。
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