knight1:私は君の騎士

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 なぜ名前を知っているのかとリィルは驚く。そんなリィルの心情をわかっているかのようにシリウスは微笑んだ。その微笑みに少しドキッとしたのは気のせいだとリィルは思いたい。 「君も知っての通り、私はこの国の近衛騎士団所属だ。調べ事など騎士団の力をもってすれば容易い」 「うわー、思いっきり職権濫用じゃん」  リィルは呆れつつも考える。これはもしかして性別の誤解もとけているのでは?と。 「君は身長はあるようだが、同じ男とは思えないくらい華奢だからね。先日のようなことがあってはならない。どうか、私に君を守らせてくれ」  しかしそんな期待も虚しく、シリウスはリィルを男だと誤解したままなのが発言から伺えた。なんでだよっ!とツッコミそうになったが、そこはぐっと堪えるリィル。相手は騎士だ。自分よりも立場が上。下手に怒りを買いたくはない。となれば、ここは素直に護衛されるのが得策だろう。    リィルはいちごタルトをかきこむように食べて、立ち上がった。 「それでは、お言葉に甘えさせていただきます」 「あぁ、任せてくれ」  シリウスは嬉しそうに微笑むと、リィルの隣に並び歩き始める。身長差はさほどないが騎士と執事服を着た奴二人が並んで歩くのはまた目立つためリィルは気が気じゃなかったが、その心配を他所にシリウスはなるべく目立たないように歩いてくれたのでそこは助かった。  しかし、やはり人の目を引くようで道行く人がちらほらとこちらを見ているのがわかる。それに少し居心地の悪さを感じるリィルだが、隣のシリウスは堂々としていた。まあ普段から人に見られる立場についているだけはある。 「ん?すまない、少し速かっただろうか?」  リィルがわざと一歩遅れて歩けば、すぐに気づくシリウス。気配り上手かよと悪態をつきそうになるが、さらっと笑みを浮かべて返した。 「いえ、大丈夫です」
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