knight5:命令だ

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「どこへ行こうとも、必ず追いかけると……そう伝えただろう?違うかい?」  言いながらシリウスはリィルに近づき、手を縛る縄を断ち切る。自由になったはずなのに、リィルは目の前のシリウスに足がすくんで動けない。  なんでこんなに怒っているのか?なんでそんな冷たい目をするのか?わからないことばかりで、シリウスが少し動いただけで、ビクッと体が反応する。 「怯えているのかい?私に?とても、残念だ。……リィル、ここはどうしたんだい?」  シリウスはリィルの右腕を見て聞いてきた。ナイフで切り付けられ赤い線が横にできたその傷は、未だに血が少し流れている。意識をしだしたら急に痛みが出てきたリィルは顔を少し歪めた。 「これは、逆上した男に切り付けられたんだよ。そんなにたいしたことは……」 「傷を作って……ああ、リィル。私はまた、君を守れなかったのか」  シリウスが淡々とした声でそう告げた。リィルはハッとした。そうだ何回もシリウスは守れなかったことを後悔しているのだ。あの最初の時から、ずっと。 「っ……なあシリウス。大丈夫だから、そんな顔するなよ」 「どうしたら、君を守れる?いっそ閉じ込めれば、傷つくことなく過ごせるのか?そうすれば、私の知らない所で、君が苦しい思いをしなくてすむのか?」  シリウスは顔を歪めて、リィルに詰め寄る。冷たい声、淡々とした口調。それなのに、その琥珀の瞳が泣いているよえにみえる。 「シリウスっ……」 「リィル、私は君の騎士だ。拒まれながらも、君を守ると誓った。それなのに、君は私の隣からも逃げていく……もし、君が私の知らないところで命を絶たれていたら……私は一生自分を許せなくなるっ」  シリウスの思いを聞いてリィルは泣きそうになった。こんなにも、想われて、こんなにもこの人を苦しめている現実に苛立つ。 「シリウスは、立派な騎士だよ」
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