knight6:逃さない、愛している

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knight6:逃さない、愛している

 あれから怖いくらいの静けさで日常が過ぎていく。相変わらず目つきの悪さと見た目から男と間違われるリィルは王都に行けば変な輩に絡まれる。  それをシリウスが颯爽と現れて、騎士らしく対処していく。 「まったく、君はいつも私をヒヤヒヤさせるね」 「仕事があってよかったじゃんか」 「これは勤務外のことだ」 「へぇ?国一番の優秀な私の騎士のくせによくいう」  軽口を言い合い、側から見れば二人は何も問題のない良好な関係に見えた。しかし、二人は互いに内面をさらけ出さない。  あの日、リィルが懇願し、シリウスを苦しめていると知ったあの日。  二人の関係は歪に、ズレが生じてしまった。  深夜。リィルは自室のベッドの上で大の字に寝転がりながら、ぼんやりと考える。  シリウスに想われているのは知っていた。それを否定しつつも心地よいと思ってしまった自分がリィルは堪らなく嫌だった。  言葉という凶器でシリウスの想いを否定して、それでも見てくれるその琥珀の眼差しに何度縋りそうになったか。  闇魔術の贄になりかけたあの時も、シリウスは助けにきてくれた。その時の顔が頭から離れない。騎士として守れなかったと悔やみ、好きが膨らみ気が狂いそうなほど、悲痛な声で訴えてきた彼を。自分なんかを好きにならなければ、そうはならなかったのにと思わずにはいられない。  “好きにならないで”  だから、そう告げた。リィルはもっと早くこの命令をしていればよかったと悔やむ。そうすれば、淡い想いも膨らむ事なく消えたのに。  自分の決断が遅かったせいで、シリウスと過ごしてしまい、彼の心を苦しめた。 「でも、もう……全部終わった」  リィルは呟く。シリウスは騎士としての責務を果たすべく、これからもリィルを守るのだろう。与えられた命令を忠実に守って。
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