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シリウスは騎士である自分が誇りだった。騎士でない自分は彼女を守れないと思っていた。でも違った、ただのシリウスとしてリィルのそばにいたいし、この身を捧げて守りたい。
シリウスはリィルの騎士。けれど、それが彼女への道を閉ざすなら……騎士の仮面を捨てた一人の男として彼女に向き合いたかったのだ。
「愛してる……リィル」
シリウスは呟いた。リィルを想う今この時だけ、ただのシリウスでいさせて欲しいと思った。
***
「リィル、少しいいかな?」
王都でいつも通りシリウスに護衛されるリィル。他愛もないやり取りをしている最中、不意に隣でかけられる声。
「なんだよ?」
「今から、私の屋敷にきてほしい。話したいことがある」
シリウスの言葉にリィルは眉根を寄せる。わざわざ二人きりで話したいことなど、きっと面倒なことに違いない。せっかく穏やかに過ごせているのにわざわざそれを壊す必要があるか?
「いやだよ。おまえと真面目な話なんか絶対ろくなことじゃない。ここで話せないなら、諦めろ」
突き放すリィルにシリウスは穏やかな笑みを消して、真剣な顔つきなった。
「頼む。リィル……私は……」
「っ……わかったよ」
シリウスのただならぬ雰囲気にリィルは思わず頷く。すると、シリウスは嬉しそうに笑った。その笑顔を見て、リィルの胸はズキンと痛んだ。
屋敷につくと、すぐにシリウスの部屋に連れていかれる。そして、ソファに座るように指示され大人しく座る。
向かい側に座ったシリウスがゆっくりと口を開いた。
「リィル、君に話さなければならないことがあるんだ」
「……なんだよ?」
真剣な眼差しで見つめられて、思わずドキリとする。しかし、リィルはすぐにぶっきらぼうに返した。
「私は、君が好きだ」
「……っ……知ってるよ」
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