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突然の告白にリィルの胸は高鳴るが、努めて冷静に返す。シリウスは悲しげに微笑んだ。
「君は私を選ばないことも知っている」
「そうだな」
淡々と頷くリィルの相槌にシリウスはフッと息を吐くように笑う。
「それでも、諦められそうにないんだ。私は君を愛してしまったから」
真っ直ぐな言葉にリィルは戸惑う。自分は彼の想いに応えるつもりはない。それは変わらない。そのはずなのに、こんなにも真っ直ぐに向けられる想いに、応えてしまいそうになる。
「おいおい、命令を忘れたのか?好きになるなって……言ったよな?諦められないからってアホなのか?おまえ騎士のくせに、主人の命令も守れないの?」
バカにしたように笑って誤魔化した。リィルは心がズキズキと痛む。今からまた言葉の凶器を振りかざして、シリウスの想いを断ち切るのだと思うとうまく笑えなかった。
ーーそれなのにだ。シリウスはリィルの言葉に怯むことも、後ろめたさも感じていない様子だった。ただ、凛としている。その態度にリィルが怪訝そうな顔をした。
「君を想うのに足枷になるのなら……自分の誇りだった騎士という立場を捨ててもいい」
「おまえ、何言って……」
「リィルを手に入れられるなら構わない」
リィルの言葉にシリウスは間髪入れずに答えた。その様子にリィルは言葉を失う。そして、目を見開いていく。
「私は君を手に入れるためなら騎士を捨てる覚悟がある」
本気だった。リィルと結ばれるためならば、本当に地位も名誉も何もかも捨ててしまえるのだろう。それほどまでにシリウスの想いが伝わってきた。
「……アホなのか?」
あまりのことに小さく呟くリィル。そんなリィルにシリウスは微笑んだまま続ける。
「ああ、そうだとも。私は君に関してはこうも短絡的になるらしい」
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